山陰の輝く人物にインタビュー
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連載
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松江をもっと面白くする まちづくりコンサルタントあり! (株)計画技術研究所 松江事務所 所長 田中隆一さん |
(VOL.26) |
まちづくりって、何でしょう。近代的なビルをいっぱい建てるってこと?障害者や高齢者向けの施設をいっぱい作るってこと?でも、それって何か違うな、と思いますよね。 (株)計画技術研究所・松江事務所の所長、田中隆一さんの話を聞いて、その思いはますます強くなりました。 田中さんがこれまでやってきたこと、そしてやろうとしていることを、披露してもらいました。 |
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◆◇元気人プロフィール | |||||||||||||
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■町の「?」を「!」に変える仕事 | |
「この町には素敵な建物がたくさんあるのに、どうしてもっと活用しないんだろう?」 もともと島根の人ではなく、計画技術研究所のスタッフとして、仕事で松江にやってきた。以後、「松江での仕事が継続してあったので」という理由で、松江事務所が立ち上がり、本人も松江に居着くことに。 |
「どの名刺出そうかな…」。初めてお会いしたとき、そう言いながら出してこられた名刺、3枚。多彩ぶりが分かります。 |
■きっかけは、まちづくり塾 | |
その発端となったのは、8年前に松江市の働きかけで発足した「まちづくり塾」。市の都市計画づくりに、市民にも参加してもらおうというものだ。田中さんは、その立ち上げに携わった。 3年後、まちづくり塾は行政の手を離れ、純粋な市民団体として新スタート。学者、学生、企業人、一般市民、いろんな立場、肩書きをもつ松江市民が集まる、ゆるやかな団体ができあがった。もちろん、田中さんもメンバーの一人として参画。市民の視点から、おもしろい事業が次々と立ち上がった。 |
田中さんが関わった取り組みの数々。まちの活性化からバリアフリー化まで、幅広いです。でも、少しも堅苦しくなく、なんだかワクワクするような内容ですよ。 |
■あったらいいなの「どこでもバスブック」 | |
「どこでもバスブック」は、まちかど研究室が発行する、松江のバス路線を網羅したガイドブックだ。小さいけれど、これなかなか、すぐれものだ。 「例えば、ここからタクシーを使わず、島根大学方面に行きたいとします。どうします?」(田中さん) 松江市白潟本町にある出雲ビル4階のオフィスで、田中さんはこう言った。記者の答えは「?」。だって、地元民ではない上、どんな公共交通機関が通っているかも、ぜんぜん分からない。 「この近くにバス停があって、そこからバスが出ているんですよ。ほら」。そう言って田中さんは、バスブックをパラパラめくる。すると、バスの路線、時刻表、目的地までの所要時間まで詳しく書いてあるページが出てきた。 「松江にバス会社が何社あるかなんて、知らないでしょう。でも、この冊子を見れば分かるし、行きたい場所にバスで行くにはどうしたらいいか、どのくらい時間がかかるか、分かりますよ」(田中さん) 松江市内には、バスの路線がたくさんある。町の「足」として十分使えるのに、肝心の情報が不足している。そこに目をつけて作ったのが、バスブック。「こういうのが欲しかった!」という市民の声が聞こえてきそうだ。 |
松江市民、必携のバスブック。これがあれば、車がなくたって、松江中のいたるところに行けます。松江には、こんなにバス路線があったんだ、と思うくらい。もちろん、観光客にとってもお役立ちの一冊です。 |
■出会いが生んだ新たな事業 | |
こんな便利冊子を手がけながら、田中さんは、バリアフリーなまちづくり、という分野に造詣が深い。 「三輪利春さんとの出会いは、とても大きかった」。 「三輪さんは、障害者の立場から、情報をうまく利用したバリアフリーを目指している人なんです」。 この出会いが育んだ「まちなか音声案内システム」は、もし実現すれば、町が今以上に面白い場所になる、ユニークなものなのだ。 |
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■障害者のためだけではない | |
このシステムで使うのは、電波を発信する音声ボックスと、その電波を受けるラジオ。例えば、ホテルのエレベーター口に音声ボックスをつけておき、ラジオを近付けると「ここはエレベーターです」と案内が流れる。 視覚障害者にとって、これはとても有益なシステムだ。町のバリアフリーがますます進むに違いない。だが田中さんは言う。 「このシステムのいいところは、障害者のためだけにあるシステムではない、というところです」。 昨年、鳥取県・境港にある水木しげるロードで、このシステムの実験導入を行った。ストリートにある妖怪のオブジェに音声ボックスを取り付け、ラジオを近付けるとオブジェの紹介が流れる、という仕掛けを、多くの人に使ってもらった。 「これは、障害者に限らず、一般の人にも楽しんでもらえました。みんなに楽しいってところが、このシステムのミソなんですよ」 まさにユニバーサルデザイン。これが町中に普及すれば、人の動きも、ビジネスも変わってくる。新しい地域の姿が生まれるかもしれない。待ち遠しいシステムだ。 |
松江は、いいところだ。いま風のビルやお店が増える一方で、古い町並みがちゃんと残っている。もし、古きよき昔の町並みを生かしつつ、誰もにやさしく、誰もがほしい情報を即座に手にできる町になれば、きっともっと素敵なところになるだろう。田中さんや、まちづくりに取り組む市民といっしょに、あなたも素敵な町を作ってみませんか? |
■これまで掲載してきた記事 |