山陰の輝く人物にインタビュー
山陰の元気人

山陰で頑張る人を取材し、紹介しています。



連載
松江が生んだショービジネスの華
闘魂ものまね芸人は 二の腕 プルプルだ!
なんちゃって聖子ちゃん

(VOL.27)


  「二の腕プルプル~」。
 この言葉、もしかしたらブームになるかもしれません。前の日に食べ過ぎて13キログラムも太ってしまった松田聖子、手を振るたびに二の腕のお肉がプルプルふるえる松田聖子、その実態は…「なんちゃって聖子」。

 こう書くと、あまりのバカっぽさに引いてしまう人もいるかも。でも彼女は、ショービジネスの世界で本格派を目指す、プロ根性十分のものまねタレントです。
  彼女のショーは、ただ松田聖子に「似てる」だけではありません。トークが楽しい。見た目が楽しい。そしてショーそのものが楽しい!

 そんな彼女はいま、全国デビューのチャンスをつかむかつかまないかの岐路に立っています。お話を聞きました。

なんちゃって聖子ちゃん なんちゃって聖子ちゃん。こうやってみると、かわいいだけのものまねタレントかな?と思うんですけど、いやいや。すごく笑えるステージを披露してくれる人です。面白いですよ。まじで。

◆◇元気人プロフィール

氏名
なんちゃって聖子ちゃん
所属
オフィス・アキーム
TEL
090-6402-7117
職業
ものまねタレント
住所
松江市東津田町1331-7-5
URL
http://www.n-seiko.com/

若いころの夢は「歌手

 歌もダンスも、トークもうまい。なんちゃって聖子は、マルチなものまね芸人だ。胸にキュンとくるような松田聖子のバラードを歌ったかと思えば、「こっちの胸がずれそうなの」と、バストを押さえながらペラペラしゃべる。面白いなあ、と思っていると、なかなかイケてるダンスを披露してくれる。とにかく、飽きさせないステージを見せてくれる人だ。生まれながらにして人を笑わせることが好きだったのかな、と思いきや、どうもそうではないらしい。

 「若い頃は、歌手になりたかったんです。高校のときは、とにかく友人や家族に『私は歌手になる』と言い続けて、卒業後は音楽学校に入学しようと思っていたんです」

 ひたすら歌手を目指し、オーディションにも応募。いつかは芸能界の華やかな舞台に立とうと心に決めていた少女の夢はしかし、家族や親戚に理解されなかった。
 「歌手になることを、親族中に反対されました。音楽学校に行きたいという願いも、断念せざるを得ませんでした」

 高校卒業後、彼女は一般企業に就職し、販売や営業の仕事をした。だが4年後、やはり夢を捨てることができずにフリーターへ。歌手になりたい、という思いを胸に日々を過ごした。

 そんな時、あるホームパーティーに出席する機会に恵まれた。これが、なんちゃって聖子誕生の第一ステップとなる。

 

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うまくしゃべれない…

 明かしてしまおう。なんちゃって聖子の本名は、浅野美希さん。6年前、FM山陰「電リクパッションライン」というラジオ番組のDJをしていた人だ。
 「実は、ホームパーティーに出席したときに、FM山陰の稲田茂アナウンサーから、DJをやってみないか?と誘われたんです」。
 業界人ばかりが集まったホームパーティーの席で、彼女はまたしても、歌手になりたい、を連呼していた。それが稲田アナの目に触れたらしい。

 少しでも歌手への夢に近づけるかと思い、引き受けたDJの仕事。ところが彼女は、それまでトークの勉強も練習もしたことがない全くの素人。たった1週間の特訓を受けただけで、本番のマイクに向かうこととなった。その時のことを、彼女は鮮明に覚えている。

 「初回のオンエアーでは、もう少しで放送事故を起こすところでした。テーブルの上にあったはずのリクエストカードがなくなって、曲のアーティスト名が言えない状態になってしまったんです」
 頭は真っ白。イヤホンからアーティスト名を告げる声が聞こえてきたものの、パニックになった彼女の耳に、それはなかなか届かなかった。
 「結局、なんとか言えたんですけど、お化けが出そうな暗い声でぼそぼそっと言っただけ(笑)」

「オフィス・アキーム」
なんちゃって聖子ちゃんの事務所「オフィス・アキーム」には、業界人、著名人と写った写真が貼ってあります。でも、聖子ちゃん自身が有名人になる日も、そう遠くないかもしれません。

 いまでこそ笑い話だが、その後3年続けたDJ生活は、彼女にとって大変なものだったという。
 「いつもトークのネタを考えていました。何をしゃべっていいのか分からなくて。何より、歌手とDJのギャップに、ものすごく苦しんだんです」
 つらくて一人悩む彼女を、たくさんの知人、友人が支えてくれた。だが、このDJとしての体験こそが、彼女の絶妙トークの基礎を作った。

 
ショーへの道

 折しも彼女は、昼はDJをするかたわら、夜は松江のショーパブ「金魚姫」で店長を務めていた。ここで歌を歌ったりしていたものの、店長としての手腕は、優秀とは言い難かった。
 「いろんなショー企画を考えるんですが、どれも盛り上がりに欠けました。下がり続ける売上に、オーナーの苦言が飛ぶ。そんな毎日でした」

 歌手とDJのはざまで苦しみ、ショーの世界で伸び悩むという20代。そのプレッシャーを思うと、よくぞここまでたどり着いた、と素直に拍手を送りたくなるほどだ。

なんちゃって聖子ちゃんイメージ
本家本元、松田聖子のポスター。ちゃんとオフィス・アキームに貼ってありました。浅野さんは毎日、このポスターをどんな思いで見つめているんでしょうね。

 そんなある日、浅野流ものまねの先駆けとなる、ある強力なキャラを生む。
 「『ガニ股マリリン』という、下品キャラでした。これがなかなかすごいキャラだったんですけど、ステージを見たお客さんの中には、下品さゆえに怒って帰る人もいました」

 DJの仕事も無事つとめ上げ、ショービジネスの真っただ中にいた彼女はこの時、ものまねという自分の新たな可能性に気づき始めていた。

 そんな彼女の導火線に火をつけたのは、ほかならぬ母親の言葉。
 「小2のとき、松田聖子さんの曲で『小麦色のマーメード』が流行っていました。そのレコードジャケットを見た母が『あなたに似てるじゃない』と言ったことを思い出したんです」

  松田聖子といえば、デビューから20年を有に超す今でも輝き続ける、日本歌謡界の最高峰。そんな聖子のものまねなら、必ず商品価値が出る。
 浅野さんの頭に、何かがビビッと走った。


 
 
■なんちゃって聖子、誕生

 右の写真を見てほしい。上がなんちゃって聖子、下が素の浅野さんだ。この二人、とても同一人物とは思えない。仕草から声から体つきまで、なんちゃって聖子と浅野さんは、まるで別の人だ。
 そのくらい、顔の作りも骨格も全く似ていなかったからだろう。最初にものまねの練習を始めたとき、周囲は「似てないから絶対うまくいかない。やめろ」と激しく反対したそうだ。

 そんな逆風を受けながらも、松田聖子のものまねをやめなかったのは、ひとえに彼女の「直感」ゆえ。
 「私、直感を信じる人間なんです。みんなにやめろ、と言われたけど、私だけは、いける!と思っていたんです」

 苔の一念、岩をも砕く。なんちゃって聖子はいまや、山陰だけでなく、山陽、四国、関東からも引き合いのあるものまねキャラになった。
 「たくさんの人が応援して下さっています。私はいま、自分にできることを懸命にやるだけ」。
 歌はいまでも好きだ。いつか、人の心に訴えかけるようなシンガーになりたい。でも、いまはなんちゃって聖子として、もっと磨きをかけていきたいという。

 彼女は、自分のショーにあるこだわりを持っている。
 「ショーが終わって最低3日は『楽しかったなあ』という余韻にひたってもらえるような、心に残るステージを目指しています」。
 客と舞台が至近距離にあるショー。なんちゃって聖子の目下の目標は、自分のショーで、全国制覇を成し遂げることだ。

なんちゃって聖子ちゃんイメージ

なんちゃって聖子ちゃんイメージ

 彼女はこの夏、ひとつのオーディションを受ける。フジテレビのものまね番組に出演できるかどうかを決めるオーディションだ。もし合格すれば、彼女は一躍、全国ネットの人となる。なんちゃって聖子をお茶の間で見られる時が、すぐに来るかもしれない。

 なのに彼女は、松江を離れる気はないという。「地元を拠点に芸能活動をしながら、優雅な生活を送りたいんです」
 な~んちゃって、といえども、さすが聖子。聖子には優雅な生活がよく似合う。

 浅野さんは、普通にしていれば、本当にきれいな“お姉さん”。だが「やじられればやじられるほど、ものまね魂に火がつく」と語るほど、彼女の中にはプロ根性が静かに燃えている。そんな、なんちゃって聖子の全国デビューを、記者はものすご~く楽しみにしている。そう、二の腕をプルプルさせながらね。


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