山陰の輝く人物にインタビュー
山陰の元気人

山陰で頑張る人を取材し、紹介しています。



連載
日本では奏者の少ないクロマティックハーモニカで父娘が全国コンクールで入賞。
思わず「ブラボー!」と叫びたくなる魅惑の音の奏者は米子市在住。
クロマティックハーモニカ演奏者
坂上達也さん(父)・和佳子さん(娘)
(VOL.23)

クロマティックハーモニカってご存知ですか? その名のとおりハーモニカの一種ですが、これが私たちのもつハーモニカのイメージを覆すような、迫力のある「芸術」の音色、ドイツ発祥の楽器なのです。

この珍しいハーモニカ演奏をする父娘にインタビューしました。全国コンクールで入賞したハイレベルな演奏技術もまたオミゴト! 話好きななお父さん・達也さんと物静かで対照的な娘・和佳子さんの ハーモニカ秘話。

坂上達也さん(父)・和佳子さん(娘)

♣プロフィール
達也さんはサラリーマンをしながら独学でクロマティックハーモニカを学び、2001年ハーモニカ奏者のプロの登竜門といわれるFIHハーモニカコンクール・ソロ部門で3位に入賞。
娘の和佳子さんも昨年度のコンクール・クラシック部門に出場し、見事優勝!
父娘でハーモニカを教える傍ら、演奏活動もこなしている。

-まず、クロマティックハーモニカはどんな楽器ですか?

 一口にハーモニカといっても数種類あるんです。日本の主流は、皆さん幼い頃一度は学校で吹いた経験のある「複音ハーモニカ」とよばれるもの。フォークシンガーがギター弾きながら吹くハーモニカは「ブルースハープ」といって、若い人に人気で奏者も増えていますね。私たちが演奏する「クロマティックハーモニカ」は、ヨーロッパではメジャーですが日本では馴染みが薄い。何が違うかというと、このハーモニカは半音(#)が出るのが大きな特徴で、つまり書かれている音符がそのままの音で演奏できて、深みのあるまろやかな音が出るんです。演奏技術でさまざまな音のバリエーションが楽しめる、表現の幅をもった本格的な楽器です。 ポピュラーからクラシックまでジャンルも問わないので演奏人口も広がりをみせていますよ。

クロマティックハーモニカドイツHohner社製のもの。技術を習得すればバリエーションのある演奏を楽しむことができる。
-どうやって習得されたのですか?

 独学です(笑)。ハーモニカと出会って18年。近場に教室も無いので、最初は通信教育でした。「ある日突然音楽の神様が音をくれた」ような衝撃でクロマティックハーモニカの音色に惹かれたんです。崎元譲さんといって、クロマティックハーモニカ演奏の第一人者の先生が指導する通信教育を受けて、それから全国から奏者が中山湖に集まるセミナーに参加したりして、自分のレベルが今どのくらいかわかるようになりました。 
2001年にFIHハーモニカコンテスト(世界ハーモニカ連盟の日本支部主催)のソロ部門で3位になりました。曲はジェームス・ムーリー「アイネ・クライネ・ヴィバルディ」。やっててよかった、まさに「継続は力なり」です。

 私はコンクールのとき、父のピアノ伴奏をしていたんです。自分もまさかハーモニカをやるとは思っていなくて(笑)。父がハーモニカを長年やっていますから、ハーモニカの音色は私にとってずっと空気みたいな存在でした。あってあたり前みたいな・・・。いつも耳に入ってくる音に慣れっこになって感覚で覚えていたんでしょうね。私も弾いてみようと思ったら自然に入っていけました。

賞状とトロフィーカップ
和佳子さんが2003年第23回FIHハーモニカコンテストのクロマティック・クラシック部門で一位になったときの賞状とトロフィーカップ。
-わずか数年で優勝するまでの実力をつけるのに相当な努力をされたのでしょうね?

 と、皆さんそう思われるようですが、実は私は一日数十分しか練習しないんです(笑)。

 私は結構練習してるんですけどねぇ(笑)。彼女は耳がよくて、曲を覚えるのが早いんです。
コンテストに出るにも予選みたいなテープ審査があるんだけど、演奏テープを聴いた人は、私が演奏して出したんだろう、って娘だと信じてくれなかったですよ。

 そうそう(笑)。でもね、音を出して練習するのは数十分かもしれないけど、その時間はめいいっぱい集中するんです! その瞬間は「練習」という意識じゃなくて、すごく楽しいことをしてるとき。ハーモニカは「努力」じゃないんです。あとの時間はCD音楽を聴いてイメージを膨らませるとか。それから腹筋を鍛えなきゃ。仰向けに寝てお腹の上に辞書を置いて、辞書が落ちるまでハーモニカを吹くとか・・・。今日これだけできれば、明日につながるだろうという思いの積み重ねです。

演奏風景自宅で演奏を披露してくれました。二人の息もピッタリ。演奏中は真剣なまなざしです。
-そんな頼もしいお嬢さんをお父さんはどう思いますか?
 うれしさと悔しさが半々ですかね。もちろんコンテストで優勝したのはうれしかったけど、いい意味でのライバル意識もあると思うし…。同じコンテストには一緒に出ないことにしているんです。
それに、私の影響を受けて娘もハーモニカを始めたわけですが、それぞれ弾き方や曲の解釈は微妙に違うものです。彼女には彼女の曲のイメージがあるから、私は細かいことを言わないようにしています。

 
-お二人の今後の目標は?
 さらなる勉強をして国際大会にも出てみたいですね。でも時間は十分あるので、あせらずじっくりと準備をしたいですし、曲の幅も広げなければと思っています。今ハーモニカを教えていますが、自分が学ぶことと人に教えるのは全然違っていて発見だらけ。そのひとつひとつが勉強になります。教えることで自分自身も一緒に成長していけるような気がしますね。

 ハーモニカが好きでうまくなる人を発掘するのも、自分の役割かなと思っているんです。ですが実際ハーモニカ奏者でプロとして自立できる人はごくわずかです。それはハーモニカの認知度が、他の楽器に比べるとまだまだ低いからというのも理由のひとつでしょうね。娘とともに演奏活動や教えることを通じて、クロマティックハーモニカの魅力を広めていけたらいいと思っていますよ。

和佳子さん
和佳子さんは昨年度の第23回FIHハーモニカコンテストのクラシック部門で見事優勝しました。

クロマティックハーモニカの演奏依頼・体験は坂上さんまで
TEL/FAX: 0859-27-2342
e-mail : harm270@amber.plala.or.jp


■これまで掲載してきた記事

tm-21.comトップへ戻る