山陰の輝く人物にインタビュー
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連載
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会見町で「体験工房 ノームの糸車」を立ち上げた |
(VOL.25) |
会見町鶴田・とっとり花回廊近くにお住まいの吉田さんが、自宅隣に立ち上げた「体験工房 ノームの糸車」は、今年4月にオープンしたばかりのホヤホヤ工房である。 このほか最近では、小規模作業所として稼動させるべくさまざまな手仕事を受注している。 |
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■ 「ノームの糸車」を立ち上げたきっかけは? | |
「私の長女は障害をもっており、養護学校に通っています。昨年はそこでPTA会長を務めさせていただき、多くの方から伺ったのは、障害者は学校を卒業すると行き場がない…という事実でした。作業所で働くとしても、そこで生計を立てるには程遠いというのが現状です。どうにかして採算の取れる仕事をつくりだせないか、そのために私にはなにができるだろうか…と考えました。障害をもつひとには、すばらしい感性をもっている方が多いんですよ。その感性を生かして収入につなげる道を模索していけたら… まだボンヤリとではありますが、そんな方向が定まりました。私はそれをデザイン・商品化という面でお手伝いしよう。いずれはそれをセレクトショップに納品したりネットショップも開店して、収入に結び付けていこう。 いまはこんな考えで、いろいろな手仕事にチャレンジしているところです。 |
会見町の自宅隣に建てられた「ノームの糸車」外観。 |
■ 現在はどんな活動をしていらっしゃいますか? | |
フェルトの体験工房のほか、布絵本の受注制作をはじめました。完全なオーダーメードですので時間がかかりますが、人気です。現在は通いで来てくれる利用者さんと私の2名で作成中ですが、ご自分で制作したいという方への指導も随時受け付けています。お孫さんへの誕生祝などに喜ばれるようですね。 そのほか、溝口町の「岸本工房」さんと連携して、木工を手伝うという仕事もはじめています。 |
素朴でどこか温かみの感じられる布絵本。一つ一つが世界でひとつしかなく、きっとお客様だけの宝物となることでしょう。 |
■ すごくパワフルですよね。疲れがたまることもあると思うんですが、いつも明るくて励まされます。吉田さんのその元気のモトはなんですか? | |
うーん…好きなことを仕事にしているので、べつに疲れないんですよねえ(笑)…休みの日でも生地を探していますよ。それと、ひとが得意分野を生かして活動している、その生き生きした姿を見るのが好きなんです。得意を生かせずにいるひとをみると残念に思いますし、なんとか得意を生かして、もっと元気になってほしいと思う。そのためのお手伝いをしたいと強く思っています。 知りあいでね、こんなひとがいました。物語をつくるのが大好きで作家になりたくて、上京してある作家に弟子入りしたいとがんばっていたんだけど、両親が猛烈に反対し、大企業への就職を勧めたそうなんです。「親不孝をしてはいけない」「仕事は安定しているほうがいい」ということで、泣く泣く夢をあきらめたということでした。 私はそんな話を聞くと憤りを覚えてしまうんですよね。ひとって、自分の好きなこと・得意なことをしているときが一番生き生きしているし、自然な姿だと思うんですよ。 もっとも、親に反対されても押し切り、夢をかなえるひともいますが、親や周囲の反対を押し切れずにいるひと…経済的な事情や、まわりを悲しませたくないという優しさから二の足を踏んでしまうひと…って、けっこう多いと思うんですよね。私はそういうひとの夢を後押しし、かなえる手伝いをしたい。そんなお手伝いを仕事にしたい。それはずっと昔、「ノームの糸車」を思いつく前からずっと考え、あたためてきたことでした。 知人の例でいえば、作家に弟子入りするのは叶わなかったかもしれない。けれどなにかを書きたいという夢は、なんとか後押ししたい。たとえば…「ノームの糸車」にいっしょにかかわってもらい、宣伝用の文章を書くとか、通信を作成するとか。それを収入に結びつける方法も、いっしょに考えていく。「ノームの糸車」にかかわるスタッフがみな、こんなふうに自分の得意分野を生かして活動できればと願っています。 それと…ボランティアスタッフの存在も元気のモトです。みな仕事をもっていて忙しい中ではありますが、セレクトショップの情報を流してくれたり、折にふれ紹介するなど宣伝に協力してくれたり、商品のアイディアや知恵を貸してくれたり。「ノームの糸車」は、こんなひとのつながりで成り立っているんだと、つくづく思います。ありがたいと感謝しています。」 |
作業中風景。それは真剣そのもの。だがそこには言葉では言い表せない、仕事に対する喜びと充実、そして愛情が込められているようでした。 |
アメリカの絵本作家、ターシャ・テューダ(有名な絵本作家。86歳になった今でも、片田舎に住み、電気もガスも使わず、自給自足で18世紀のライフスタイルを実践し続けている)のようなおばあさんになるのが夢という吉田さん。ターシャと同じく手仕事をこよなく愛し、味噌などは黒豆から手作りしているといいます。温かくソフトでパワフルで、とっても魅力的な女性でした。 「ノームの糸車」は、はじめて訪問するひとも温かく出迎えてもらえるやさしい場所です。ぜひ一度、訪れてみてください。 なお、障害をお持ちの方で「ノームの糸車」の仕事をお手伝いしてくださる方を広く募集中です。利用者として登録いただくと、花回廊のシャトルバス(米子駅⇔花回廊)が利用できます。詳細は、吉田さん宛てお問い合わせください。 |
連絡先はこちら 電話・fax0859-64-3404(吉田さん)まで。火・日はお休みです。 |
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