山陰の輝く人物にインタビュー
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連載
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幸せの花をアレンジメント。 山陰でただ1人のヒーリングアートフラワーの講師 山本 圭子(やまもとけいこ)さん |
(VOL.39) |
【今回の元気人】 オフィス・イグレッグの山本圭子さん。口コミで来るお客さんと、お茶を楽しみながら語らうのが好きだとか。 |
お花に囲まれた生活って、理想です。ちょっと気分が落ち込んだとき、お花を見ると、気持ちがパッと明るくなります。でも、花はいつか枯れてしまうもの。ですが「枯れないお花」もあるんです。それが「ヒーリングアートフラワー」。
いつまでもきれいな花たちを素敵にアレンジし、訪れる人に提供しているオフィス・イグレッグ(島根県松江市)の山本圭子さんにお会いしました。
山本さんは、ヒーリングアートフラワーを「幸せの花」と言う。花には元来、人をいやす力があるが、それに加えて、ヒーリングアートフラワーは、いつまでも枯れず、その上、部屋の空気をきれいにしてくれる働きがある。つまり、置くだけでたくさんの幸せをもたらしてくれるのだ。
ところで、ヒーリングアートフラワーとは、何か。
「簡単に言ってしまえば、造花です。ですが、その造花に光触媒をコーティングすることで、花を汚れから守り、室内のにおいや細菌も分解するんです」と山本さんは語る。
光触媒とは、ビル外壁のコーティング材、抗菌タイル、空気清浄機の脱臭フィルターなどに使われている工業用の材料。化粧品にも使われるなど、幅広い用途がある。光触媒には酸化チタンが含まれており、においのもととなる有機物や、その有機物を養分とするウイルスを酸化し、分解してくれる。また、室内の油分も分解してくれるので、汚れを防ぐ効果もある。 この光触媒を造花に吹き付け、空気清浄と汚れ防止をプラスしたのが、ヒーリングアートフラワーなのだ。
小さなアレンジフラワーから、花器に飾られた生け花のような作品まで、その種類は数えきれないほど。一つひとつ、手作りしておられます。 |
造花というと、生花より少し劣る感じがするが、山本さんが作り出すヒーリングアートフラワーは、生花と何ら見劣りすることはない。ブーケ、リース、器に生けられた花etc…。近寄ってよく見ないと、作りものだとは分からない。部屋中を埋め尽くすアートフラワーで、オフィスはまるでフラワーショップだ。
お花屋さんになりたかったから、アートフラワーを始めたのかな、と思ったら、違った。山本さんが花の良さを強く感じたのは、結婚後、ドイツに渡ってからのことだったという。
「商社マンの夫と結婚して、ドイツに渡りました。当時はまだ、ベルリンの壁が国を隔てていた時代。私たちはしばらくの間、東ベルリンに住んでいたのです」
かつての東ベルリンといえば共産圏。物が豊富な西ベルリンとは違い、東ベルリンは、お店に品物があまりないという状態が当たり前だったと、山本さんは思い返す。
「ときどき、車に乗って西ベルリンへ買い物に行くんですが、検問のチェックは厳しく、いつも渋滞を起こしていました。私たちは日本人だったので、それほど厳しくされませんでしたが、西と東ではこれほど違うのか、と思い知らされました」。
だが、物質的な苦労よりもむしろ、知人もいない東ドイツで、生まれて間もない子供を抱えて生きる不安の方が大きかった。いつも心細さを感じていたという。 「そんな私をいやしてくれたのが、花なんです」。
目には見えませんが、花の表面には、光触媒がコーティングされています。煙草をよく吸われるご家庭などでは、テーブルにさりげなく置いてみては?消臭剤を置くよりも、ずっとおしゃれです。 |
山本さんが住んでいた地区は、東ドイツの中でも比較的裕福なところで、辺りの家々は軒並み、庭を鮮やかな花でいっぱいにしていた。
「ベビーカーを押しながら、そんな庭を見て回っていました。どのおうちも、庭の手入れが行き届いていて、お花が絶えることがないんです。このお庭の花は枯れないのかしら?と思ったほどですよ」(山本さん)。
その頃から、山本さんは花に魅了され、いつまでも美しく咲いている花があったらいいな、と心の中で思っていた。
異国で2年過ごしたあと、帰国。松江の実家にもどり、建設業を継ぐことになった山本さんは、建築士、宅建、土木の資格を次々と取得し、花とはかけ離れた仕事に明け暮れていた。
だが、花との再会は、意外にも建設関係の仕事を通じて果たされることになる。
山本さんは、塗装材料としての光触媒に出合ったが、そのときに、光触媒を使ったヒーリングアートフラワーがある、ということを知ったのだ。
「ヒーリングアートフラワーを目にしたとき、ああ、これは私が手がけなきゃいけないものだ、と思いました。光触媒を通じて知ったのも、何かの縁だと」。
以来、アートフラワーの技術を学び、自分の作品を作るとともに、出張スクールで人に教えるようにもなった。建設業として立ち上げたオフィス・イグレッグも、いまではすっかり、ヒーリングアートフラワーの園となっている。
山本さんに、ヒーリングアートフラワーの最大の魅力を聞いてみた。
オフィス・イグレッグ
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「枯れないこと、ですね。生花もいいですが、いつかは枯れてしまいます。でもヒーリングアートフラワーは、光触媒によって空気を浄化してくれるのはもちろん、汚れがつきにくいので、いつまでもキレイなんです」。
半永久的に美しく、気持ちや空気までもさわやかにしてくれる花は、人の支えになってくれる、山本さんはそう感じている。
山本さんはいま、県内各地で行われる出張スクールで講師を務める傍ら、口コミでオフィスを訪れる人に、ヒーリングアートフラワーを販売している。加えてレンタルも行っており、契約先のオフィスやビルに、定期的に違った花を飾っている。 花に満たされた、おだやかな空間。そんな空間を演出するため、山本さんはヒーリングアートフラワーを、もっとたくさんの人に知ってほしい、と願っている。
建築家から、花の伝道師へ。山本さんはこれからも、花と二人三脚で歩んでいく。
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