山陰の輝く人物にインタビュー
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連載
松江を楽しむためのHP、地域密着型MLを管理運営。「松江を楽しくする会」の

荒川長巳(あらかわ おさみ)さん

(VOL.31)


「松江を日本で一番いい町に」。そう言い続け、活動している人がいる。

精神科医で、現在は島根大学で 相談業務 に携わる荒川長巳さん。12年前、松江にUターン。そのときの体験から、松江を楽しむためのホームページ(以下HP)、メーリングリスト(同ML)を6年前に立ち上げた。そのきっかけは?目的は?

「今日松江に来た人 も、今 から松江を楽しむための情報満載」というHPをさっそくのぞいてみると…。

(取材:三浦 加寿子)

荒川長巳さん「ホームページが県外から来て途方に暮れている人のお役に立てばいい。enjoyはROM(Read Only Member)しているだけもいろんな情報が入ってくる。決して損のないメーリングリストですよ」と話す荒川長巳さん

松江を楽しむために
松江を楽しむ方法
松江を楽しむ方法
茶道(不昧流) : 「茶道を知らなきゃ、松江の魅力も半減。楽しいですよ。 お点前 に飽きたら茶花、懐石、焼物、建築、 墨跡 …。一生かかっても全部できないかも」

冬は日が当たらないし、人も少ない。こんな寂しいところでどうなるのかと思っている人いませんか? 

HPの表紙に書かれた荒川長巳さんの言葉。「そうそう!」。島根県で生まれ育った者でも、思わずうなずいてしまう。でも荒川さんは言う。

「丸い大根も切りようで四角。冬が寒ければ魚もおいしいかも。それなりに楽しむ方法があるんじゃないですか」と。17年間、故郷・松江を離れて暮らした。その目には、街の美しさ、おいしい食べ物が新鮮に映ったのだという。

その楽しみ方を教えてくれるのが、HP「まあ~お茶でも・・」とML「enjoy」。
HP「まあ~お茶でも・・」はさまざまなイベント情報や、暮らす・遊ぶための情報、さらに「どこそこの○○がおいしい」といったお店紹介(マニアックな情報もあって面白い!)、旬の食材情報など荒川さんが集めた種々雑多な話題が紹介されている。「病院へ行きたいけど」「ゴミの出し方は?」「おいしいラーメンが食べたい」…。松江で暮らすためのお役立ち情報が、まるでドラえもんのポケットのようにあふれ出る。

情報収集や仲間探しのための地域密着型オープンML「enjoy」もHPと同時に開設。メンバーはUターン、Iターン、学生など約 400人 、3カ月に1度はオフ会も開いている。

このHP、MLは「松江を楽しくする会」(以前は「松江を楽しむ会」)が管理運営する。といっても、その実体は荒川さん一人。「MLを維持するのは大変なんです。 投稿数が ゼロにならないよう自転車操業の日々。家族を犠牲にしてやっていますよ(苦笑)」

そうまでして荒川さんを突き動かしているものは何なのか?
■ 孤立を防いでコミュニティの回復を
松江を楽しむ方法
松江を楽しむ方法
着物 : 「これからの季節は着物を着て町を歩くのが楽しみ。冬の夕暮れ時は最高!」

17年振りに故郷で暮らし始めた荒川さんを待ち受けていたのは、「孤立」の2文字だった。高校時代の友達はほとんど地元にいない。大学の先生といっても、相談業務という立場上、外に出ることもままならない。

「家と職場の往復に寂しい思いをした。孤立は非常に辛い。県外出身の妻はもっと辛かったと思う」。そんな時、MLの存在を知り、孤立という中でのコミュニケーションツールとしてMLに興味を持ったという。

「インターネットで『松江』って検索したら、『松江にようこそ。どうぞ楽しんでいってくださいね。困ったらここに連絡をしたらいいよ。お友達を見つけたかったらこのMLに登録したらいいよ』と親切にしてくれるHPやMLが12年前にあったら、自分はどんなに助かったかと思うね」

島根大学の学生も同じだった。7割が県外出身者。自宅と学校、あるいは学校周辺の往復だけでは、学生もまた孤立してしまう。

「面白くないって文句ばかり言っても、世の中は変わらない。松江って結構面白いって思えば、面白そうな仲間が集まって盛り上がる。どっちがいいって、楽しい方がいいに決まってるよ。田舎で面白くないと言うのは情報がないからだと思う。情報があれば松江での暮らしがもっと面白いものになるんじゃないかな」

慣れないパソコンと格闘する日々が始まった。

MLを開設して気付いたことがある。松江で育った人も、実は家と職場の往復で人と知り合うチャンスがない。程度の差はあれ、みんな孤立しているということ。

「それを防ぐために楽しむ会がある。僕は松江を日本で一番いい町にしたい、と言い続けています。一番いい町とは何か。それは物が豊富とか便利ということでなく、あなたにとって幸せかどうか心の問題。その基本は人間関係です。 快適な コミュニティがあれば、人はどこにいても幸せ。そのお手伝いができればいい。そうすれば、松江に住んで良かった、と思ってもらえるから」

荒川さんがやろうとしていること、それは「コミュニティの回復」だという。

■ 風通しのいい、開放的なMLを目指す
松江を楽しむ方法
松江を楽しむ方法
アウトドラライフ : 「スキー場も海水浴場もすぐ近く。それって都会では考えられない豊かさ。町の真中で高級魚スズキが釣れるなんて、普通じゃ考えられないよ」

「enjoy」は地域密着型のML。誰でも好きなときに気軽に入れ、いろいろな人が行き交う広場のようなもの。メールが少ないのは「立ち読みのいない本屋」、チャットが多いのは「常連客の多い喫茶店」(enjoyではチャットはできません)。どちらも入りにくい。「enjoy」はこの中間的な位置を狙い、開放的な運営を目指す。

しかし相手の表情が見えないだけに、時には危険なコミュニケーションツールにもなり得る。風通しをよくするために、3カ月に一度オフ会を開催している(ホスト役もかなり大変らしい)。

■ 点と点がつながって

「enjoy」での出会いからさまざまなイベントや団体も誕生した。子育て支援団体・よろず皆援隊(かいえんたい)、ゴスペルグループ・メリーメーカーズ、しまねユニバーサルデザイン研究会などなど。子・孫MLも増え、荒川さんが「全体が見えない」というほど波及している。

「点と点がつながれば、いろんなことができることも分かった。ここで出会って自分の場所を見つけたら、そこで楽しくやってもらえばいい。僕はつなぐ役目だから」。「松江を楽しむ会」から「松江を楽しくする会」へ、会の名前も変更した。

11月からはプレゼンテーション付きオフ会を企画する。テーマはNPO、ボランティア、コミュニティビジネスなど。初回は荒川さんが「enjoy」について話す予定だ。

HP「まあ~お茶でも・・」
HP「まあ~お茶でも・・」 。
ML「enjoy」の登録は、上記HPの「まずメーリングリストに登録を!」のページに詳しい登録方法が書いてあります。

「情報を事前に流せば興味のある人が集まってくる。そうすれば、まちづくり効果も上がるのではないかと思う」。コミュニティ回復に向けて新たな試みを展開していく考え。松江をラクロスの町にしようという計画も進行中だ。

松江を元気に、学生を元気に。荒川さんの願いがHP「まあ~お茶でも・・」、ML「enjoy」を通して波及し、形あるものとして実を結びつつある。 


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