山陰の輝く企業にインタビュー



連載
「山陰人、本気になろう」
(「
Willさんいん 長谷川陽子さん)
第18回
(Vol.18)

 
 
「Willさんいん=長谷川陽子よ」。
 この一言に最初、うわーワンマンな会社だなーと、正直思いました。でも話をするうち、それは誤解だと気づきました。

 Willさんいん社長、長谷川陽子さんは、決して一人よがりな人物ではありません。女性の優しさを持ち、人間に愛情を抱いている人なのです。

 そんな彼女が舵を取るこの会社は、「何かをしたい!」と切望する人にとっては、力強い味方。
 ソーホーを目指す方、必読です!

WIllさんいんの長谷川陽子さん
 Willさんいん代表取締役、長谷川陽子さん。ずばずば物を言いますが、この人と話すと、不思議と元気が出ます。よーしやるぞー、という気持ちを引き出してくれる人です。
 

 
●まず、人ありき。

 松江市内のビルにある、こじんまりしたオフィス。ここには毎日、山陰在住のSOHO(ソーホー)たちが集まってくる。ソーホーとは、自宅や自分だけの小さなオフィスで、請け負った仕事をする、個人事業主のこと。大企業の歯車で一生を終えたくなくてソーホーに転向した人、専業主婦からソーホーになった人、彼らの顔はさまざまだ。

 Willさんいんは、ホームページやプロモーションムービーなどのデジタルコンテンツを作成したり、パソコン研修の講師を派遣したりしている、総合デジタル会社。ここで主な戦力となっているのが、彼らソーホーなのだ。

 普通、ソーホーは個人で仕事を取り、個人でこなす。しかしWillさんいんでは、ソーホーらが何人かでチームを組み、ひとつの仕事をしていく。その仲介、コーディネートをしているのが、長谷川さんだ。

「私は企業や行政から仕事をもらってくる、いわば営業。その仕事を、何人かのソーホーたちと一緒にやっていきます」。

WIllさんいんの会社概要  営業と言っても、ただの御用聞きではない。
例えばある会社のホームページを作る仕事を、長谷川さんが受けたとする。彼女がまず最初にするのは、その会社の強みや求めるものを、深く掘り下げること。

「本当に必要なホームページはどんな内容のものか、その会社の人たちといっしょに考え、いっしょに作っていくんです」

 長谷川さんは、仕事を発注するお客にとっても良きコーディネーター、アドバイザーなのだ。

 仕事を通して、人とのつながりを創造する。それが彼女の仕事。そして、ふと気付けば、Willさんいん=長谷川陽子、になっていた。しかし長谷川さんは、自分一人ではキャパシティに限界がある、ということも、ちゃんと知っている。
「まず人がいる」。
 Willさんいんの会社概要の最初に、書かれている言葉です。

●あったらいいな、を創り出す。

 そもそも長谷川さんが会社を興したのには、ある理由がある。
 「学校を卒業して30歳まで関西で暮らしていましたが、事情があってこちらに戻ってきました。そのとき思ったのが『情報が少なすぎる』ということ。都会だったら、ゴミ出しの方法や日時など、生活情報がきちんと発信されているのですが、こっちにはそれがなかった」。

 帰郷し、団体職員として働いていた長谷川さんは、こういう情報を発信する場自体が、そもそもない、ということに気づく。
「ないなら、自分で作ろう、と思った。ちょうど駆け出しのパソコン・インストラクターだったので、いろんな人に会う機会があったんです。その出会いの数々が、私に起業を決心させたんです」。

 あったらいいな、というものを創りたい。そう決心した日から、長谷川さんは名刺を大量に配って、自分ができる仕事をアピールした。それをきっかけにどんどん仕事が舞い込むようになり、起業。そして長谷川さんは、自分にできない仕事をやってくれるソーホーを募集したのだ。
 

 
Willさんいんのホームページ  でも、どうして社員ではなく、ソーホーなのか。
「仕事は一人ではできない、いろんな人に支えられているんだ、といつも思っています」

 見も知らなかった他人同士がコミュニケーションを取りながら、自分の経歴を積み上げていってくれること。そんな人が増えることに、どうやら長谷川さんは、大きな喜びを感じている。だからこそ、社員ではなく、ソーホーにこだわるのだろう。

●本気を買う

 ところでWillさんいんでは、随時ソーホーを募集しているが、その中で多く見かけられるのが女性。そして、大企業での地位ある職を辞してまで、ソーホーになりたい男性も多く応募してくる。
Willさんいんのホームページ。ここから、同社のソーホーとして登録申し込みができます。
 長谷川さんは、女性達に呼びかけています。Willさんいんは、あなたらしく生きる、きっかけ、と。

 そんな人達がソーホーとなり、輝いていく様子を見るのは、長谷川さんにとってもうれしいこと。だが、応募者すべてと面接をする彼女は、こう言う。
「いざ面接してみると、ソーホーとしてやっていくのは難しいな、と思う人がいっぱいいます」

 ソーホーは甘くない。技能があるのはもちろん、自分で仕事をとって来れるほどの情熱がなければ、本来はとても務まらない。だが、その辺りの覚悟が欠けている女性が多い、という。

「ソーホーの人たちに対して、毎月、勉強会を開いていますが、パソコンの勉強会なんか開いてみると、その人の実力がよく分かるんですよ。面接の時に言っていたほど技能はないな、とか」。

 でもなぜか、長谷川さんは彼らを切り捨てない。今は何もできなくても、いつも勉強会に通ってくる人などは、本気で仕事をしたいと思っている人だ。実力やキャリアよりむしろ、長谷川さんは「本気」を買う。

「高い能力があっても、仕事に穴をあけるような姿勢の人とは、いっしょに仕事できません」。大事なのは、人間性なのだ。
 

 
おかいものネットのサイト ←自宅や会社にいながら、今晩のお買い物ができる「お!かいものネット」。Willさんいんのアイデア作品です。地域密着の電子スーパーってところ。これは使ってみたい!
●目指せ!山陰のシリコンバレー

 Willさんいんはつい最近、家から出られないお年寄りや主婦が、インターネットで食料品を注文すると、その日のうちに宅配してくれるという「お!かいものネット」を作り上げた。これも、同社にソーホー登録している人たちによる仕事だ。

 歩いて数分のところにコンビニやスーパーがある都会とは違い、田舎では毎日の買い物もひと苦労。そんな不便を解消してくれるのが「お!かいものネット」だ。あったらいいなが、一つ実現した。

 そしていま、長谷川さんが考えている「あったらいいな」は、「テラビットバレー構想」。
「ソーホーたちがぶらっときて情報交換できる場所を作りたい。さらに、そこへ地域の人や障害を持った人たちがきて、いろんな情報を交換できる場所が、私が生まれ育った松江市寺町にほしいんです」。

 テラビットバレーとは、寺町と、デジタルビジネス発祥の地であるアメリカの都市、シリコンバレーをかけ合わせた名前。立場も仕事も違う人たちがコミュニケーションする中から、新しい仕事やビジネスが生まれれば、寺町は山陰のシリコンバレーになれる。そんな願いが込められている。

 やりたい、と思ったら即動くのが、長谷川さんのいいところ。現在、寺町付近で場所を提供してくれる人を探している。
長谷川さん横顔 
 無類の行動派である長谷川さん。彼女は、ソーホーの集まりである「しまねSOHO協議会」の会長でもあります。人の集まるところ、彼女あり、です。
 長谷川さんは10月、アメリカで大ヒット映画を手がけた映像技術者らを招いたイベント「IMMF」(詳しくはここをクリック!)を企画、開催した。
「デジタルの世界で働く山陰人に、最先端の技術を見てほしかった。それに、イベントによってできた人とのつながりが、何か次の可能性を生むような気がするんです」。

 これをやりたい!という一念だけで、会社を興し、事業を立ち上げてきた長谷川さん。彼女の夢を聞いているだけで、楽しくなってくる。

 Willさんいんの「Will」とは、強い意志のこと。ソーホーを育て、人の輪を広げる長谷川さんの原動力は、元気を失っていく地域や人間を変えたい!という意志だ。
 もしあなたにwillがあるなら、年齢、性別、障害の有無など関係なく、長谷川さんといっしょに、ドキドキするような仕事ができるはず。さあ、本気になってみよう。
 
 
Willさんいんのロゴ
有限会社 Willさんいん
代表取締役 長谷川陽子
島根県松江市白潟本町43スティックビル3F
ホームページ http://www.will3in.jp/


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