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いまや、たくさんの農水産物が、インターネットで通信販売される時代。お店を通さず、生産者から直に食物を買える、というのが魅力です。
でも、生産者の中には、インターネットはおろか、パソコンすら使えない農家のおじさん、漁村のおばさん達がいっぱい。
しかし、あうるネット(島根県松江市)が考えた「ファックス電子青空市場」というしくみを利用すれば、パソコンがなくても、ネット通販が始められます。
社長の青戸裕司さんに、その内容について話してもらいました。
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↑あうるネット代表の青戸裕司さん。5年前に脱サラ、会社を立ち上げました。松江市で最初に立ち上げたパソコン通信ホスト局やコンピュータ関連の趣味が高じ、このビジネスに着手。仕事を通じ、たくさんの知人、友人を得ておられます。 |
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ファックスあればOK。電子青空市場
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↑インターネット通販といえど、実際に使うのはパソコンではなく、ファックス。注文のメールも、生産者宅のファックスに、自動的に送信されるしくみになっています。 |
安全な食材を、直接、生産者から買いたい。消費者の切なる願いだ。かたや生産者は、こだわって作った作物を、十把一絡げに売ってしまう流通業者を通さず、直に消費者に届けたい、と思っている。そんな両者の願いをかなえるのが、ネット通販だ。
しかし、パソコンが使えないために、なかなかネット通販に踏み出せない生産者も多い。島根のような田舎では、なおさらだ。
「だからこそ、ファックス電子青空市場を考案したのです」(青戸さん)。
そう。青戸さんの作った「ファックス電子青空市場」は、パソコンを持っていなくても、インターネットの知識がゼロでも、生産者がこだわって作った作物をネットで通販できる、というしくみなのだ。
ふつう、ネット通販を始めようと思ったら、パソコン、インターネットプロバイダーとの契約、ホームページ作成の知識と、いろいろなものが必要になる。だが、ファックス電子青空市場で必要なのは、「ファックス」だけだ。
例えば、ある農家が、無農薬米を電子青空市場で売りたい、とする。農家は、そのお米の情報を手書きして、あうるネットにファックスで送る。すると、その情報がそのままインターネット上に公開される。それを見て「買いたい!」と思った消費者は、そのホームページの注文フォームから送信ボタンを押す。すると、それがまたファックスで直に農家に送られ、それをもとに、農家は消費者に品物を発送する(詳細はこちらから)。
パソコンと格闘したり、機器にお金をかける必要もない。のんびりと、ファックスでの情報のやりとりを見守っていればいいのだ。
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「手書き」という本物
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だが、ファックス電子青空市場の醍醐味は、これだけではない。消費者に強いアピール力を持っているというのも、このしくみの大きな特徴だ。
「ここ1、2年、食べ物に関する不祥事が続いていますよね。これがきっかけで、消費者の間に、有名ブランドでも信用できない、という思いが広がっています」。
スーパーやデパートの地下食品売場に行くと、「農家の○○さんが作った野菜です」という看板を目にする。いまどきの消費者志向に答えるためのものだ。しかし、その情報だけでは物足りなくなってきているという。
「もはや、『顔の見える食材』というだけでは、消費者を納得させられないんです」。では、どうしたら消費者に信用してもらえるか。そこで効を奏すのが、「生産者自らの手書きの情報発信」だ。
ファックス電子青空市場で作物を販売している、島根県内のある農家。あうるネットホームページ内にある農家専用ページを開くと、農家のおじさんが書いた、素朴な筆跡が目に飛び込んでくる。作物を作る過程を、日記風に記したものだ。決して上手な文章ではないが、おじさんの人となりが伝わってきて、ほっとする。
さらに、作物を育てるのに、どんな種類の農薬をどのくらい使用したかまで、手書きそのままの状態で載せる。これらの情報は、農家がファックスで送ったものを、自動的にインターネット上に載せているので、誰の手も経ていない。
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↑手書き情報はもちろん、写真も、作物のありのままを伝えてくれるものです。
このページには、田んぼに浮き草が浮いている写真があります。浮き草は、農薬の使用で激減してしまった植物。
農薬を使わず米を育てているか、農薬の量が少ない場合に、浮草は見られる、とのことです。
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「手書きであることの最も大きな意味は、生の情報を偽りなく流している、ということを、消費者に伝えられるところにあります」。
作物の作り手である農家が、自らの手で発信した情報。生産者しか知らない貴重なエピソード、そして肥料などの情報公開。これが消費者の信用を獲得し、「ぜひ買ってみたい」という気持ちを起こさせるのだという。
実際、このしくみを利用することによって、都市部からの注文がどっと増えた農家もある。デジタル化された情報ばかり目につくインターネットの世界で、手書き情報は、大きな説得力を持つのだ。
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ふぞろいだから価値がある
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日本は、国産より輸入物を多く食べている国ですが、毎日食べるものは、やっぱり国産がいいな、と思っている人も多いでしょう。青戸さんのつくったしくみは、それを実現してくれるものです。
日本で育った作物を食べることで、海外からの輸送や加工にかかるエネルギーも節約できます。
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生産者がファックス電子青空市場で作物を販売するには、あうるネットと契約を結ぶ必要があるが、青戸さんは、どんな生産者とも契約しているわけではない。「こだわり」を持った人達と契約するよう心がけている。
無農薬に徹する、自然のままに作物を育てる、というこだわりがなければ、いかにファックス電子青空市場を利用しても、作物は売れないという。
工業品だけでなく、農水産物まで効率化のいま。お店からは、ふぞろいの食材が消え、形も色も規格品のように整ったものが並ぶ。
だけど、作物は自然が作るもの。規格品ばかりできる方がおかしい。規格品の陰には、農薬や自然破壊がひそんでいるのではないか、そう感づいている消費者は多い。
「あるがままに作物を育てている、といったこだわりこそが、商品の価値を生み出すのです。昔はふぞろいの野菜なんて売り物になりませんでしたが、今は、ふぞろいであることが価値になっています」
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島根のやさしさ表現したい
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青戸さんは現在、県内の市町村をかけまわって、こだわりを持つ農家や漁師を探し、ファックス電子青空市場への参加を呼びかけている。
「農産物って、田舎のやさしさを一番表現しているものだ、と思うんです」。
田んぼで地道に草とりするおじさん、海にもぐって、さざえやあわびを獲るおばさん。その姿を見せることで、消費者は、食物への安心や信頼を寄せる。そしてその姿こそ、島根の「やさしさ」なのだ。
青戸さんは、今は都会で指示されている島根の農産物を、いずれは県内の人にもたくさん消費してほしい、と思っている。そして、ファックスとインターネットを組み合わせたこのシステムを、地元の情報交換にも役立てたい、と考えている。
「あうるネットのしくみが、島根の活性化につながればうれしいです。たくさんの人に、しくみを利用してほしいですね」。ありのままの島根を活かし、町に活力を取り戻す。あうるネットのしくみは、それを実現してくれる、地域の強い見方なのだ。
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