山陰の輝く企業にインタビュー
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山陰の元気企業

このコーナーでは、山陰でがんばる企業を紹介しています。やる気あふれる企業を取材。そのビジネス魂をお伝えします。

タイトル

 日本って、いい国です。だって、世界中のごちそうが手に入る国なのですから。まさしく豊食の国。でも、それって本当に幸せなことなのでしょうか。

 食事が本当においしい、と感じるのは、大好きな人といっしょに食卓を囲むとき。そんな幸せな食を目指し、伝えたい、と強く思っている会社が、「茄子の花」です。ところで、なぜこんな社名なのでしょうか。代表の石原奈津子さんに聞きました。

茄子の花スタッフ
 茄子の花スタッフのみなさん。中央が代表の石原奈津子さんです。アメリカ留学、福祉器具メーカーを経て、昔から興味のあった教育分野の仕事をしようと、この会社を創りました。

■食べるということ

松江市・白潟本町の商店街に、その会社はある。「茄子の花」。入り口に立つと、かわいらしい子供服や、おもちゃの木馬が目に入ってくる。何かのショップかな?と足を踏み入れてみると、縦長の屋内に、木のぬくもりを感じるフリースペースが設けられている。
 ふと壁を見ると、そこには子供達のかわいい手形が、いくつもいくつも押されている。ちっちゃな手、中くらいの手、元気いっぱいに広げられた手。手形を押す時の、子供達の歓声が聞こえてきそうだ。

 そう、茄子の花は、「子どもと食」をテーマに事業を展開する会社。そして手形いっぱいの空間は、子供たちや親が気軽に集える子育てスペース「TonTon(トントン)」なのだ。いま、週に2回の幼児教室や、母親対象の育児カウンセリングなどを行っている。
 そのほか、赤ちゃんの離乳食販売、子育てや食に関するイベント開催etc。子供と食べ物に関する企画をどんどん立案し、実行している。
 
 茄子の花を立ち上げた、代表の石原さんはこう言う。「いまの世の中、食べ物は豊かにあります。でも、子供達を取り巻く食の実情を見てみると、異常なまでに食べてしまう過食、一人きりで食事をする孤食などの問題が起こっています」
 食べ物はいっぱいあっても、心は満たされているのだろうか。この問題意識が、茄子の花の起業に結びついた。
 でも、茄子の花がユニークなのは、子供だけに目を向けているところではない。そこに「お年寄り」を招き入れているところなのだ。

■捨てるところなし

 さて、ここで冒頭の疑問、「茄子の花」という社名の由来が気になってくる。
 石原さんやスタッフの名刺には、こんな言葉が書いてある。
「親の意見と茄子の花は 千にひとつも無駄がない」

 はて、これはどういう意味ですか?と聞いてみた。
「茄子は、花が咲いたところに、必ず実をつけるんです。つまり、茄子の花には、ひとつの無駄もない。同じように、親やお年寄りの意見には、すべて意味や含蓄があって、聞いて無駄になることはないんです」。

 石原さんが子供の頃、近所には、自分達のことを気にかけてくれるおばあちゃんやお年寄りがいた。そして、学校の帰り道に声をかけてくれて、お茶をいっしょに飲んだりするのが日常の風景だった。

 また、石原さんの自宅には、介護が必要な祖母がいた。そんな祖母からも、いろんなことを教わったという。
「母が祖母の介護をしていましたが、母は『祖母の面倒を見れてよかった』と言っていました。私も、お年寄りの存在価値を肌身で感じました」。

 日本の伝統、食べ物、風土について、熟知しているお年寄り。こういう人たちの知恵に、捨てるところはない。何とか子育てに取り入れられないか。その理念が、社名に込められているのだ。

子育てスペースの手形
 子育てスペース「TonTon」に押された壁いっぱいの手形。かわいくて、思わず微笑んでしまいました。
■気が付くと一緒にいる

 石原さんはまず、中高年ばかりを集めたネットワークを作り、生きがいを感じてもらうためのイベントやセミナーを開催。そんな中で、お年寄りと子どもを結ぶ、具体的な「商品」が生まれてきた。

 例えば「ことわざカルタ」。ことわざをカルタにすることで、子供達に、昔から伝わる教訓や言葉に触れてもらおう、というものだ。5000セットあったが、すでに完売した。

 次に実現したのが、「着物地の服」。着物を子供服にリメイクした商品だ。もちろんお年寄りの手作り。子育てスペースTonTonでも販売し、着物のよさ、手作り感を子供や若い親に感じてもらった。

「お年寄りと子供が面と向かった交流、というより、何かを通じて、自然な形で触れあってほしい、と思っているんです」
 そこにお年寄りがいる、という緊張感ではなく、気がつくと一緒にいる、という自然さ。昔は当たり前だったこの風景を、石原さんは少しでも復活できたら、と思っている。

茄子の花店内
 茄子の花に一歩足を踏み入れたところは、こんな感じ。ショップ感覚で気軽に足を踏み入れてみると、思わぬ出会いがあるかもしれません。
■おやつの時間
 おばあちゃんの知恵や、昔ながらの伝統を一番実感できるのは、何と言っても食べ物。地域ならではのおやつや食材を通しても、お年寄り世代と若い世代が近づくきっかけができる。

 子育てスペースTonTonで行われる幼児教室には、英語クラスと音楽クラスがあるが、ここでひとつの目玉となっているのが、「おやつの時間」。ここでは、地域のおばあちゃんたちが手間ひまかけて作ったお菓子や、減農薬・無添加のおやつを出している。例えば、素朴な原料で作られたまんじゅうやせんべいなどだ。

「市販の、濃い味のお菓子に慣れた子供にとっては、食べたことのない味でしょうね。おいしくない、と思っているかも」と石原さんは笑う。
「でも、そんなお菓子もあるんだ、と思うことが、大事な体験です」。

 それに、お菓子の味や安全性に惹かれた若い母親が、直接、地域の生産者から製品を買う、というケースも生まれている、おやつの時間がなかったら実現していない、人と人とのつながりだ。
■楽しい食を子ども達に
 茄子の花は今年、新商品として、ある食品を売り出した。それは、ベビーフード「あかちゃんどうぞ」。地元や国内の素材を使った、無添加のフードだ。にんじんのピューレ、うどん、とり肉と大根のスープなど、10品目をそろえている。添加物を入れていないので、保存方法は冷凍。素材の味と新鮮さを保っている。

 茄子の花のスタッフが、ベビーフード製造を依頼している食品工場に見学に行った時のことを話してくれた。
「びっくりしました。だって機械ではなく、工場のおばちゃんたちが人力で食材をすりつぶしたりしてるんです。本当に手作りです」
 ベビーフードは、ファックスやメールで全国に販売。12月からはインターネットによる直販も始めている。

 石原さんは最近、食の専門家らを集めた「子どもと食の楽会」を設立。また、子供と食に関する情報盛りだくさんのサイト「おいしいハートhttp://www.oishii-heart.net」も立ち上げ、活動の幅をさらに広げている。そしてなんと、このほど農林水産省が主催する「第一回食育コンクール2003」の企業部門で、全国第一位に選ばれるという快挙を成し遂げた。

 子ども達やお父さん、お母さんに、食を楽しんでほしい、と石原さん。茄子の花の活動は、もっともっと面白くなるに違いない。

ベビーフードあかちゃんどうぞ
 無添加ベビーフード「あかちゃんどうぞ」。これだけでも食べられるほか、お料理の素材としても使えます。これからは、消費者の声を、どんどん商品に取り入れていくそうです。

茄子の花ホームページ
企業データ
社名
有限会社 茄子の花
住所
〒690-0061
島根県松江市白潟本町30
TEL
0852-55-6233
メール
info@nasuno87.co.jp
URL
http://www.nasuno87.co.jp

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