山陰の輝く企業にインタビュー
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山陰の元気企業

このコーナーでは、山陰でがんばる企業を紹介しています。やる気あふれる企業を取材。そのビジネス魂をお伝えします。

連 載
シンクタンクとは、行き詰まったときの道しるべ。
「どうしたらいいの?」を解決してくれる会社

株式会社 シーズ総合政策研究所

第24回

 町おこしをしたい!故郷のためになる事業を始めたい!そんな思いを持っている人、特に田舎には多いのではないでしょうか。
 山陰は、全国でも有数の過疎地であり、人口減少地域。なんとか活気を取り戻したい、と記者なんかも強く思っています。
 でも悲しいかな、具体的に何をしたらいいのか分からない。これを解決してくれるのが、シンクタンクという職業です。

  シーズ総合政策研究所は、地域に根をおろしたシンクタンク事業をしてくれる会社。お話を聞きました。

シーズ総合政策研究所の常務、藤原明さん
 シーズ総合政策研究所・常務の藤原明さん。松江市にあるオフィスで「シンクタンクって何するところ?」と初歩的な質問を投げてみました。さすが、丁寧に答えてくれました。

「どうすればいいの?」を解決

・出雲市新ビジネスパーク基本構想策定
・島根県中山間地域産業振興プログラム策定
・福岡県まちづくり将来構想案策定支援 etc…


 華々しい実績が会社案内に並ぶ。地域振興の企画・計画策定はもとより、最近では、市町村合併に関する計画策定や支援業務を多く手がけている。商業、農林、環境、防災、福祉、業務の幅はあらゆる分野におよんでいるー。

 こう書くと、すごくインテリジェンスな感じがするが、反面「なんか漢字がいっぱい並んでいてよく分からない」というふうになりはしないか(少なくとも記者はそうなる)。そして、素朴な疑問が頭をもたげる。「シンクタンクって、一体何するところなの?」

  この疑問に、すっきり答えてくれたのが、ほかでもない、同社常務の藤原明さんだ。
「何かしたいんだけど、どうしていいか分からない、という時に、具体的なアイデアや方法を提供したり、それを実践する人を支援したりするのが、私たちなんです」。

  もっと噛み砕こう。
  例えば記者が、「町の若者と高齢者を結びつける交流事業をやりたい!」と思いついたとしよう。しかし、事業に対して何のノウハウもない記者には、どうやって若者や高齢者に声をかければいいのか、どうやって事業を運営していけばいいのか、そもそも、若者と高齢者の交流って、具体的に何をしていけば一番効果が上がるのか、などなど、何にも分からない。

  そこを、記者といっしょに考えてくれて、必要な知識や経営ノウハウを与えてくれるのが、シンクタンクなのだ。
  シーズ総合政策研究所は、そんなシンクタンク事業を行う会社だ。同社は4つの事業を柱としており、それを示しているのが右の図。ネットワーク支援、まちづくりなどが挙げられている。

  この一つひとつを詳しく説明すると長くなるので、やめておく。興味のある方はシーズのホームページを見てほしい。それよりもむしろ、ここで記しておきたいのは、シーズの「強み」とも呼べること。この会社の大きな特徴と言ってもいいことだ。それはズバリ、「自ら野に出る」という姿勢だ。

シーズの事業戦略図
 シーズの事業戦略を図にしたもの。いろいろ書いてありますが、目指すところは、「新しい地域の暮らし方の探求、提案、実践」です。

鉄の歴史村

 このことを説明するには、シーズの所長、藤原洋さんの経歴に触れなければならない。

  藤原所長は、もと吉田村の職員。その時代、吉田村には他より秀でた特徴も産業もなく、過疎化によって町が衰退し始めていた。だが、吉田村は遠い昔、たたらの里として、日本の製鉄業の中心として栄えたところ。その跡や古い町並みが残ってはいたものの、当時それを「町の財産」として顧みる人は少なかった。

 「たたらで、町おこしをしよう」
  そんな思いから立ち上げられたのが、「鉄の歴史村」構想だ。藤原所長は、村の職員として、この一大事業に深く携わってきた人物なのだ。
  「所長は、鉄の歴史村事業で、単に計画立案や提言をしていただけではありません。実際に地域の人たちと話し合ったり、いっしょに仕事をしたりしてきた『現場主義』を貫いてきた人なのです」(藤原さん)。

  地域で何か新しいことを始めるのは、とても大変なことだ。どんなに活力を感じる事業計画をつくったとしても、地域の人たちからは、前向きな反応ばかりが返ってくるわけではない。
「その事業で、自分たちが本当にトクをするのか、もっと現実的には『それをやって儲かるのか?』という話になります。何も意見を言わず、そっと成り行きを見ている人もいます。たまに意見を聞こうとすると、ふっと陰に隠れちゃう人とか(笑)。でもそれが現実なんです」。

  机の上で計画を練っているだけでは、地域づくりはできない。現場に行って、町の人たちと同じ空気を吸い、いっしょに考え、行動する。この生々しい体験がベースになっている会社こそ、シーズなのだ。

吉田村のホームページ
 吉田村ではいま、住民、シーズ、事業者がそれぞれ出資し合う「株式会社鉄の歴史村」が立ち上がっています。藤原所長が先鞭をつけた鉄の歴史村事業が、きっかけとなっています。
  株式会社鉄の歴史村では、鉄の村の歴史や有機農業を通して人の交流を増やし、町を活性化していく事業を展開していきます。ここでの主役は、吉田村の住民。官ではなく、民による地域づくりが始まっていきます。
(上は吉田村のホームページhttp://www.web-sanin.co.jp
/local/yoshida/
点と点を結ぶ作業

 創業からわずか6年の間に、県内外で数々のシンクタンク事業を手がけてきたシーズ。そしてこの春、新しい事業を立ち上げた。「3セク支援事業」だ。
  三セク=第三セクター(連載22回山陰の元気人・キララ多伎山本幸成さんhttp://www.tm-21.com/genkijin/yamamoto/index.htmlにプチ説明あり)の中には、成績の良いところもあるが、事業の方向性が定まらず、行き詰まりを見せているところも少なくない。シーズの新事業が対象とするのは、そんな三セクだ。

  この4月、東京に「3セク経営支援センター」という拠点を置き、事業を開始。藤原さんがその統括マネージャーを務めている。
  藤原さんは最近、三セク支援に必要なのものは、「つながり」「ネットワーク」だと強く感じている。

  「ほかの三セクや市町村がどんな状況にあるか、案外みんな知らないものなのです」
  三セクは得てして、自分たちだけで問題を解決しようとしがち。しかし藤原さんは言う。
  「こちらの三セクに必要なセンスやノウハウが、あちらの三セクで発見できた、なんてこともたびたびあります。三セク同士のノウハウを結びつけることが重要だな、と痛感しています」

  今年ピークを迎えている市町村合併によって、三セクをどうするか、という議論が始まりつつある。中には、存続か廃止かを選ばなければならないケースもある。だが、三セクを負の遺産にしないために、正しく状況を理解して判断を下さなければならない。そのためにも、ネットワーク、提携が重要だという。

  シーズでは、多方面の専門家とネットワークを組み、さまざまな問題に対応できる体制を整えている。まさしく「知のネットワーク化」だ。
  同社によると、三セクの多くは経営観念に乏しい、という問題点がある。でも逆に言えば、経営の部分を改善すれば、息を吹き返す可能性があるということだ。「三セクを立て直したいんだけど、具体的にどうしたらいいのか分からない」という人たちの、良き相談役になってくれそうだ。

ホームページ
 シーズ総合政策研究所のホームページ。トップページに、C's=シーズの意味が書いてあります。
 シンクタンクというと、小難しい研究者の世界を想像してしまうが、少なくともシーズは違う。ある町の地域振興事業を依頼されれば、実際にスタッフが現地へ赴き、1、2年そこに住みつくこともあるという。藤原社長の現場主義は、こういうところにも生きている。
 町、人という「現場」を大切にする姿勢に、おおいに共感した。

■過去ログ(これまで掲載してきた記事です) ■今回掲載した企業


社名
株式会社シーズ総合政策研究所
住所

島根県松江市菅田町180
原徳興産ビル2-3F

TEL
(0852)55-8450
FAX
(0852)55-8497
メール
mail@csri.jp
URL
http://www.csri.jp/
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