山陰の輝く企業にインタビュー



連載
売れるネット通販、王者のコツ!
「朝どれ本舗(島根県松江市)」
第17回
(Vol.17)

 
 「ネット通販で商品を販売しとるけど、なかなか売れんわ」という声がちらほら聞こえてきます。

 
パソコンさえあれば誰でも店主になれるインターネット通販ですが、実施者の大半が同じ悩みを抱えています。それは、「思ったほど売れない…」。

 しかし、やり方次第で大ヒットを飛ばせるんだってことを、身をもって示しているのが、『朝どれ本舗』代表の竹内大晴さんです。

 『売れないネット通販』から脱皮する極意を、ドドーンと教えてもらいました。
朝どれ日本海のホームページ
 朝どれ本舗のホームページ「朝どれ日本海」。ごく平凡な造りですが、商品を売るのに手の混んだサイトはいらないのです。では、秘けつはどこに?
 

  ●たった半日で、数百万円。

 日本最大のインターネット通販サイト「楽天」に出店している「朝どれ日本海」。ここには、注文メールがいつも大量に押し寄せている。カニ、イクラ、海老、ギョーザ。売りに出す目玉商品の多くが、販売から1日経つか経たないかの間に、何百、何万個と飛ぶように売れていく…。

 そんな、よだれが出そうな商いをしているのが、「朝どれ本舗」という小さなネット通販会社。朝どれ日本海は、この会社が開くホームページだ。

 山陰の古都、松江にひっそり事務所を構える会社なのに、いまや日本屈指のネット通販会社だ。屈指ったって、一体どのくらいの腕前なの?と思って聞いてみると、いやはやすごい。「多い時には、半日で250万円売り上げる」とのこと。これは本物だ。

 こんなすごいネット通販をやっている人、竹内さんは、しかし飄々としている。「うーん、ネット通販について、すごく勉強したりはしてないです」。

 元手いらず、経費いらず、誰でもできるのがネット通販の魅力。全国にあまた参入者はいるが、本当に大儲けているのは、ほんの一部の人たちだけ。さて、この差は一体、どこから生まれてくるのか。

●ホームページで売るのではない

「勘違いしている人がいますけど、ネット通販は、ホームページでものを売るんじゃないんですよ」。

 いきなり、竹内さんはおかしなことを言い出した。ネット通販は、ホームページに掲載した商品を消費者に見てもらい、買ってもらうのが基本だ。だが、竹内さんが次々ヒットを飛ばしている秘密は、ホームページではない、という。

「メルマガですよ。これで品物を売っていくんです」

 たしかに、朝どれ日本海に載っている商品は、味や品質は折り紙付きながら、特に目立ちもしなければ、激安でもない。なのに、バカ売れしているのだ。

 メルマガ=メールマガジンとは、希望者に無料で送られてくる情報メール。プレゼント、お買い得品、新商品の情報などがずらっと載っている。竹内さんはこれで、驚きの売上高を記録している。メルマガを発行し始めてから4年、いまやメルマガ会員は5万6千人にものぼる。

商品の一例
 商品は海産物が中心ですが、たまにギョーザが売りに出たりもします。品物は、竹内さん厳選の食品だけに、顧客の評判も二重丸のようです。
 しかし、だ。メルマガを一度でも見たことのある人は分かるように、日夜あふれ返るほど配信されてくる。私のところへも、複数の業者から一日に何通も届くので、ろくに目も通さずゴミ箱へ直行。こんな人が大多数のはずだ。

 そんな中で、朝どれ日本海のメルマガは、お客さんの心をがっちりつかんで離さない。
「ですから、読んでもらえるように、メルマガの内容には人一倍気を使っています」。
 

 
●言葉の魔法

 竹内さんは、お客の目に止まるメルマガの「法則」について、こう語る。

「まず『おもしろい話』が載っていること。私の場合、笑い話のネタを持ってきて、次に商品の紹介、プレゼントコーナー、日記を載せています」
 百聞は一見に如かず。メルマガを見てみた。

 まず目を引くのが、メルマガのタイトル。
「驚きました。イクラが獲れすぎて…」。
「大変です!未冷凍の紅ズワイガニが…」

 なになに?何があるの?と、ついメルマガの本文を読みたくなる。実はこのタイトル1行が、ネット通販成功のカギをにぎる、といっても過言ではない。

商品写真
 そして、文頭付近にあるのが、顧客の心を鷲掴みにする竹内さん得意のネタ。

「ライダー変身ベルトを段ボールで造ったことのある、店長の竹内大晴です♪♪」
「『北の国から』の最終回で、純君が富良野を離れて住んでいた街…そこが高級海産物で有名な羅臼(らうす)町です」

 憎いほどに、3、40代のツボを突いてくる。
「ネット通販で買い物をする年齢層は、30~60代。ある程度の経済力がある人たちが中心です」。ネタも、一番の顧客が誰なのかを計算して考えているのだ。

←朝どれ日本海のメールマガジン。商品とは関係ないお笑いネタが、かなり面白いです。笑わせてくれます。

 商品の紹介文も、さらっと書いてあるようで、とことん考え抜かれている。

 こんな例がある。カニの足にたわわについた身を、水産用語で「棒身」といい、当初、竹内さんも「カニ棒身」で売り出していた。ところが、お買得商品にもかかわらず、売れない。なぜかと考えたところ、思い当たる節があった。

「一般の人に『棒身』と言ってもピンと来ないということが分かったんです。そこでネーミングを変えました」

 新しい名前は「タップリかに足肉」。たったこれだけで、同じ商品の売り上げがとたんに急上昇し、いまや人気商品のひとつになった。まさに言葉の魔法だ。
商品の一例2
 商品の売り方にも仕掛けあり。
 ホームページには目玉商品とともに、安めの家庭用食品が載せてあります。
「他の商品もいっしょに買えば、同一送料でいろんな物を送ってもらえるわけですから、お客さんにとって便利ですよね」
 こうして、3000円の目玉商品を売り出した場合、客単価は5000円くらいに。雪だるま式ってわけです。

 

 
●気づかいが大差を生む

 竹内さんは、週3回メルマガを発行しているが、これをこなそうとすると、片手間では無理、と言う。ネット通販で商売をしていこうと決めた時、竹内さんは、それまでやっていた水産物卸の仕事をすべて打ち切った。

「メルマガの内容をどんな風にするか、毎日そればっかり考えてます」。魔法の言葉を生み出すには、やっぱり努力が必要なのだ。

竹内さん

 竹内大晴さん。見た目、まじめな方ですが、面白いメルマガを考えつく名人。メルマガには「タケちゃん」として登場しています。

 「ネット通販で物を買う人は、圧倒的に関東人です。この人たちが食材に求めているのは、まず、便利であること。そして、おいしさなんです」

 顧客志向に合った新商品を考案するのも、竹内さんの大事な仕事。これだけのことをやろうとすると、本業の合間にネット通販、というわけにはいかなくなるのだ。


 それにしても驚くのは、顧客へのケア。竹内さんは大量の注文メールを、ひとつ残らず自分で見る。

 もしお客が誕生日を迎えていたら、商品といっしょにバースデーカードを送る。苦情に対しては時間を置かずに即お詫びをする。こういうアフターサービスを充実させていることが、もうひとつの人気の秘密なのだ。

「私がどれだけ顧客に気を遣っているか、ちょっと想像できないと思いますよ」。
 楽して儲かる商売なし、だ

 商売は目のつけどころ次第、というが、ネット通販もしかり。ネット通販自体が金のなる木ではなく、これを利用し、いかに顧客の「興味」と「信頼」を得るか。これが、儲かる、儲からないの分岐点だ、と竹内さんは教えてくれた。
 さあ、ネット通販、あなたもチャレンジしてみる?

 
商品紹介の例
有限会社 朝どれ本舗
代表取締役 竹内大晴
島根県松江市東本町2-25-6
TEL:0852-55-4463
ホームページ http://www.rakuten.co.jp/asadore/


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