山陰の輝く人物にインタビュー
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連載
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やりたいこと、思う存分やれる「働く形」を考案中。
ビッグボイス 代表 渡辺哲也 これが未来の働き方だ! |
(VOL.21)
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■多彩で多才 | |
渡辺さんは、私が持っている世間並みのものさしでは計れない人だ。だって、「お仕事は何ですか?」と聞いても、明確な答えは返ってこない。職種をたずねても、多岐にわたっているので、これ、というのが出てこない。ただ、一人でいろいろなことを手がけている「仕事人」には違いない。 渡辺さんの手がけている仕事は、島根県内のホームページの新着情報を検索するサイト「ビッグボイス」の運営、企業や自治体のホームページ管理、町の景観提案、福祉専門学校の非常勤講師、NPO法人「納川の会」の副理事長、などなど。実に多彩な仕事ぶりだ。 他人から見ると「個人で何だかよく分からないことをやっている人」かもしれない。だがそれは、渡辺さんのせいではなく、私たちが、彼の仕事を、世間の一般常識に当てはめて考えようとしているからだ。 |
ビッグボイスのホームページ。県内の企業や団体などが持つホームページが更新されたり、新着情報が載ったりすると、それを検索してきて公開します。これなんと、渡辺さんがボランティアでやっているサイト。なのに、けっこうな登録数を誇る一大サイトです。すごい。 |
■同じことはしない | |
渡辺さんは小さい頃から10代後半まで、あちこちを点々としてきた。父親の仕事の都合だったり、自分の健康状態が原因だったりと、理由はまちまちだが、島根県内の中部、西部、そして大阪にも住んだ。 そして17才の時、大阪から島根に、再びもどってきた。 あの当時、登校拒否をするなんて、よほど気骨があったに違いない。原因は何?と聞いてみた。 それに、渡辺さんは小さい頃、母親からこう言われていたという。 人と同じことはしないという哲学。だから常に、新しいことを手がけていく。多彩な仕事ぶりは、ここに理由があったのだ。 |
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■すいすいコーディネーター | |
渡辺さんの面白いところは、ただ複数の仕事をやっているというところではない。彼は、自分で仕事を「創出」してしまう人なのだ。 例えば、渡辺さんの大きな仕事のひとつである、企業や自治体のホームページ管理という仕事。ふつう、こう言われて想像するのは、ホームページを更新したり、リニューアルしたりという作業だ。だが渡辺さんがやっているのは、そういうことではない。なにしろ、渡辺さん自身がホームページのデザインをやっているわけではないのだ。 「どこの情報をどこに持ってきたら仕事がスムーズになるか、どの情報を公開することに意義があるのか、といったことを考え、やっているんです」。 「私自身、会社に勤めていたことがありますから、そこでのノウハウを活用しています。会社って、細かいすれ違いや情報伝達の不具合がいっぱい出てくるところ。これを収集する人がいないと、業務が回っていかないんです」。 人と人との間にある認識や情報のズレ、モレを解消し、スムーズに仕事が進行する環境を整えてくれる職種。コンサルタントともちょっと違う。アドバイザーもしっくりこない。「お仕事すいすいコーディネーター」なんて名前をつけたら、渡辺さん、気を悪くするだろうか。 |
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■脱!組織 | |
そんな渡辺さん、いま、これまでの常識を覆す、新しい「働く形」を構想し、実際の仕事の場で実現したいと考えている。 「本来、組織というのは、ある目的を達するために存在するもの。それなのに、長いこと組織があり続けると、組織を守ること自体が目的になるという、という本末転倒なことが起きてくるんです。でもそれを変えるには、膨大なエネルギーが必要。そのうち、自分自身が組織に染まってきたりして。そんなことになるくらいなら、いっそ組織の外に出た働き方をした方がいいと思うんです」。 ならば、渡辺さんが考える働き方とは、何なのか。 つまりこういうことだ。組織にいると、仕事が変化しても自分の役回りは変わらない。業務内容が変わっても、部長は部長、課長は課長、ヒラ社員はヒラ社員だ。だが渡辺さんは、仕事の内容によって、ヒラが部長に変わってもいい、と考えている。 ある仕事については、自分は共同作業者の一人であっても、自分がやりたくて構想した仕事については、自らが責任者となり、共同作業者を募って作業を進めていく。ひとつの仕事にとどまらず、複数の仕事を、こんなふうに手がけていくのだ。 こういう「働く形」の中では、いつも自分が主役だ。これまでは、組織が主役で、人はその中の歯車として配置される。でも、渡辺さんの構想する形なら、いつでも自分が中心。その分、責任も重くなるし実力も要求されるけど、上から下へ仕事がおりていく、という従来の組織の形からは自由になれる。 |
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石見銀山の里、大森。渡辺さんは、大森の出身者ではない。たまたま以前勤めていた会社が大森にあり、それが縁でここに住み始めた。これまでいろんな土地に住んできた渡辺さんだが、いまは、大森を故郷にするのだと、心に決めている。 渡辺さんの考え方には、きっと賛否両論あるに違いない。でも、これだけは言える。渡辺さんが構想する「働く形」に、私はドキドキした。ああ、こんなふうに働けたら、仕事が、人生がすごく面白いだろうなあ、と。日々安定した生活もいい。でもやっぱり、仕事でドキドキしたい!と思うのは、私だけではないはずだ。 |
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