山陰の輝く企業にインタビュー
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山陰の元気企業

このコーナーでは、山陰でがんばる企業を紹介しています。やる気あふれる企業を取材。そのビジネス魂をお伝えします。

連 載
「コーチング」資格を持つのは、中小企業の社長!オヤジが取り組む人育ての極意。
プライム有限会社 代表取締役

松井博昭(まつい ひろあき)さん

第32回

上司のみなさん、部下に「命令」だけをしていませんか?部下のみなさん、上司に「意見が言いにくい」と感じていませんか?もし身に覚えがあるなら、「コーチング」という言葉を記憶しておいて、損はありません。

コーチングとは、やる気と能力を引き出す最新のコミュニケーション技術。松井博昭さんは、この認定資格を取った数少ない島根人です。しかも、コンサルタントでもカウンセラーでもなく、プライム有限会社という会社の代表。

なぜ中小企業の“社長さん”自らが、この資格を取ったのでしょう。お話を聞きました。

プライム有限会社 代表取締役 プライム有限会社代表の松井博昭さん。中国地方に数少ない認定プロフェショナルコーチの 資格保持者です

■自分で答えを見つける対話術

コーチングは、その人が抱えている問題について、その人自身が解決策を見いだしていけるよう導いていく対話術だ。コーチングの対局にあるのが、ティーチング(教えること)。命令、指示などは、ティーチングの分野に入る。

プライム有限会社
プライムの社員は約100人。コーチングの成果があったのか、社員のみなさんは初対面の私にも、きちんと対応してくれました。

例えば、部下の売り上げがなかなか上がらないとき、上司は命令や指導をしがちだが、これは一方的なティーチング。対してコーチングでは、部下のいま置かれている状況を丁寧に聞き、部下自身が対策を見いだせるよう質問を投げ、いっしょに答えを探していく、双方向のコミュニケーションだ。アメリカ生まれのこの方法は、社内での対話を活発にしていく良薬として、日本でも話題になり始めている。

「説明するより、やってみた方が分かりやすいですよ」。コーチングの魅力に気づき、ついには認定資格まで取ってしまった松井さんが、記者にそう言った。百聞は一見にしかず。やってみてもらうことにした。

・・・「あなたがいま、仕事上でぶつかっていることは、何ですか?」
「大阪在住ながら島根でやりたい仕事があるので、できれば週一回こっちに来たいんです。でも大阪に夫や子供を残して来るので、その都度家事をお願いする夫、母親のいない日を過ごさせる子供に申し訳ない。私は、仕事のために家庭をないがしろにしていいとは思っていません」

・・・「なるほど。ほかに問題はありますか?」
「そうですねえ。大阪、島根の往復交通費もバカになりません」

・・・「経済的な面と家庭的な面と、両方をなんとかしなくてはならない、ということですね。ところで、どうしても島根に来なくてはならないんですか?」
「はい。メールという便利な道具ができたおかげで、距離が離れていても仕事はできなくはないですが、やはり人と会って話をしたり営業をしたりというのは、島根に来ないとできませんから」

・・・「そうですか。何か方法はありませんかねえ」
「う?ん…私の手、足、耳、目、口の代わりとなって動いてくれる人が島根にいれば、いいんですけど…」

・・・「ほう!あなたの代わりになってくれる人がいれば、何度も島根に来なくてもいいんですね。そういう人に心当たりは?」
「心当たりはないですが、探すあてはあります」

・・・「ほほう、探すことはできるんですね。そのあては具体的にどういう?」
「○○さんという人なら、とても顔が広く、そういった人探しがとても上手です」

・・・「では、その人に頼んでみることができるんですね。その人と連絡がとれるのはいつですか?」
「明日でも。メールでやりとりできますから」
・・・「では、明日メールを送ってみましょう。送ったら、そのことを私に報告して下さいね」

この対話の最中、松井さんは一度も、「こうした方がいい」というアドバイスさえしていない。なのに、松井さんの質問に従って考えた結果、記者は自分で解決策を見つけてしまった。ほんの短時間だったが、自分の中に答えがある、ということを実感できた、とても心地よい体験だった。「目標があって、それに到達できないと悩んでいる人は、既にその解決策を自分の中に持っているものなんです」。松井さんは言う。

■社員が自ら考え、自ら行動する

松井さんが社長を務めるプライムは、自販機ボタンなどの制御装置部品を作る会社。コーチングを導入する前は、不良品を多く出してしまうなど、会社にとって「品質向上」が大きな課題として横たわっていた。

プライム有限会社
社内の壁に貼られていました。コーチングは、すっかりプライムに浸透しているようでした。

そんなとき松井さんは、中小企業大学の移動教室でコーチングと出合った。人材育成の方法を探していた松井さんの目に、コーチングはとても興味深い手法に映った。それ以来、松井さんはコーチングを電話会議で学べるシステムを見つけ、勉強すると同時に社内で実践。今年、生涯学習開発財団が発行するコーチングの認定書を取得した。

コーチングの極意は、相手の話をじっくり聞き、相手のことを認め、相手に気づきを与える質問をすること。松井さんはまず、部課長クラスの一人ひとりに対して、コーチングをやってみた。

「あとで彼らの感想を聞いてみると、とても良かった、と言うんです。そもそも、社長と一対一で話すという機会がそれまでなかったので、社長に聞いてもらえた、ということ自体が、とても心理的に良い影響をもたらしたようです」。

そうした体験を繰り返すうち、部課長たちが、今度は自分の部下にもやってみたい、と言い始めた。こうして、コーチングは徐々に社員へと広がっていき、この手法を導入してから1年、社員一人ひとりが、上司の指示をあおぐのではなく、どうやったら問題解決できるかを自分で考えて提言するようになった。

結果、会社経営にも大きなプラスをもたらした。「悩みの種だった不良品が、減少したんです」社員の表情も大きく変わり、社内に積極的な空気が流れ始めた。上司に話を聞いてもらって、自分で解決策を見いだすという体験が、人に自信とやる気をもたらした結果だ。

「昔は、モノやお金が人を発奮させたものですが、いまや社員の方が社長よりいい車に乗ってたりする時代(笑)。では、何が社員をやる気にしてくれるのか。それは、一人の人間として認めてもらえている、と感じたときではないでしょうか」

■中小企業の社長ならでは

松井さんは、コーチングと必要とする会社があるなら、自分が行ける範囲内で講習やトレーニングを実施していきたい、という。すでに依頼により今夏には東京の大手コンサルタント会社でコーチングを指導する予定である。

「コーチングを専門に手がけるトレーナーは全国に何人もいますが、彼らの共通の悩みは『社長自らがコーチングを受けてくれない』ということ。部下にコーチングを教えてやってくれ、と言われることが多いのだそうです。でも社長がコーチングの良さを体感しなければ、社内に浸透しません」

そこへいくと松井さんは、自身が社長。トップがコーチングを学んだからこそ、その優れたところを最良の形で社内に導入することができたのだ。そして、同じ立場にいる中小企業の経営者に、より適切な形でコーチングを伝えることもできる。

最初は真っ正面から取り組んでいたコーチングも、ある程度効果が上がってきたいまでは、ちょっと肩の力を抜いて取り組めるようになったとか。「社内で“自分を認めよう運動”や“社員ヒーローインタビュー”を実施するなど、楽しみながらやっています。いずれは、中小企業のオヤジ ( 社長 ) に捧げる実践コーチングの本を出してみたいですね」。

「やさしいコーチング」の講座を山陰中央新報の文化センター出雲教室で生徒さんを 募集中です。   
お問い合わせ先 出雲教室 0853-23-0456

取材記者:tm-21.com山陰の女性サイトわらう~まんナビゲーター 高野朋美


■過去ログ(これまで掲載してきた記事です) ■今回掲載した企業


社名
プライム有限会社
住所
島根県出雲市矢尾町273
TEL
0853-22-6239
FAX
0853-25-0020
メール
ma-prime@agate.plala.or.jp
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